「世間のある人々には・・・・・・」Guy Charles Cros(ギイ・シャルル・クロオ) 上田敏訳

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蟾蜍(ひきがえる)

Guy Charles Cros(ギイ・シャルル・クロオ)

ある人々には、一体、生(いのち)はごく手軽な、
造作も無い尋常一様の事で、
手紙を書いたり、一寸(ちょっと)は「あそび」もしたり、
とにかく「用事」は済ませてゆく。
してその翌日(あくるひ)も同じ事を繰返して、
昨日に異(かわ)らぬ慣例(しきたり)に従えばよい。
即ち荒っぽい大きな歓楽(よろこび)を避(よ)けてさえいれば、
自然また大きな悲哀(かなしみ)もやって来ないのだ。
ゆくてを塞(ふさ)ぐ邪魔な石を
蟾蜍(ひきがえる)は廻って通る。

しかし、君、もし本当に生きていたいなら、
その日その日に新しい力を出して、
荒れ狂う生(いのち)、鼻息強く跳ね踊る生(いのち)、
御せられまいとする生(いのち)にうち克たねばならぬ。
一刻も息(やす)む間の無い奇蹟を行ってこそ
乱れそそげたこの鬣(たてがみ)
汗ばみ跳(はず)むこの脇腹、
湯気を立てたるこの鼻頭(はなづら)は自由に出来る。
君よ、君の生(いのち)は愛の一念であれ、
心残りの錆(さび)も無く、
後悔の錆(さび)も無く、
鋼鉄の清い光に輝け。


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