ジャン・ニコラ・アルチュール・ランボー詩集 中原中也訳  びつくりした奴等


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 びつくりした奴等


雪の中、濃霧の中の黒ン坊か
炎のみゆる気孔の前に、
   奴等車座くるまざ

跪(ひざま)づき、五人の小童こわつぱ――あなあはれ!――
ジツと見てゐる、麺麭(パン)屋が焼くのを
   ふつくらとした金褐の麺麭、

奴等見てゐるその白い頑丈な腕が
粘粉ねりこでつちて窯(かま)に入れるを
   燃ゆる窯の穴の中。

奴等聴くのだいい麺麭の焼ける音。
ニタニタ顔の麺麭屋殿には
   古い節ふしなぞ唸つてる。

奴等まるまり、身動きもせぬ、
真ツ赤な気孔の息吹いぶきの前に
   胸かと熱い息吹の前に。

メディオノーシュ(1)に、
ブリオーシュ(2)にして
   麺麭を売り出すその時に、

煤けた大きい梁の下にて、
蟋蟀(こほろぎ)と、出来たての
   麺麭の皮とが唄(うた)ふ時、

窯の息吹ぞ命を煽り、
襤褸(ぼろ)の下にて奴等の心は
うつとりするのだ、此の上もなく、

奴等今更生甲斐感じる、
氷花に充ちた哀れな基督エスたち、
   どいつもこいつも

窯の格子に、鼻面はなづらくつつけ、
中に見えてる色んなものに
   ぶつくさつぶやく、

なんと阿呆らし奴等は祈る
霽(は)れたる空の光の方へ
   ひどく体からだを捩じ枉(ま)げて

それで奴等の股引は裂け
それで奴等の肌襦絆
   冬の風にはふるふのだ。

 
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